大阪で豆菓子製造販売一筋創業大正2年、冨士屋製菓本舗の3代目社長の北野登己郎です。
いつも楽豆屋ブログをご覧頂きありがとうございます。
今回から、「社長の酒探訪記~酒役は俺や~」と題して、豆菓子とお酒のベストマッチングを探って行きたいと思います。
日本酒、ワイン、クラフトビールまで色々なお酒の作り手さんや、お酒のプロフェッショナルを訪問し、そこのお酒と相性の合う、豆菓子をインタビュー形式で探って行きたいと思います。
第1回目は、一番近い地元河内長野の酒蔵さんへ
地元河内長野の酒蔵、天野酒(あまのざけ)で有名な西條合資会社の西條社長を訪ねてきました。
西條さんは、私の大学の先輩でもあるので、普段から親しくしてもらっていますので、
今回の私の無理なお願いも快く引き受けてくださいました。
西條合資会社 第十代蔵主西條陽三様
今回はお時間いただきありがとうございます。
では早速ですが、まず簡単にこちらの西條さんの会社のご紹介と天野酒さんの御紹介をお願いします。
会社名は、西條合資会社と言い、みなさんは、西條酒造と思われていますが、元々は、菜種油などの油業などやっていました。
創業は、1718年(享保3年)なので、303年なのですが、明治なってからは、いわゆる金融業(銀行業)も始めていました。
では、ずっとお酒づくりをされていた訳ではないのですか?
酒造りは、当初分家がやっていましたが、明治42年に合資会社となって、
酒づくりも引き継ぐようになりました。
たいへん歴史も長い西條さんですが、
今の大阪では酒蔵は何軒ぐらいあるのですか?
現在大阪府下では、酒蔵は14軒ありますが、河内長野ではかつて4軒あったと言われています
今は私どもだけとなりました。
西條さんと言えば、天野酒のブランドで有名ですが、その由来や特徴を教えてくだい。
元々は地元の天野山、金剛寺のお寺で作られていたお酒で、古い文献によれば1234年には既に酒づくりがされていたと書かれています。
かつては奈良が1400年代に酒づくりを始めて、日本酒発祥の地と名乗っていたようですが、さらにそれよりはるか以前に酒づくりがされていたことになります。
当時は、いわゆるどぶろくが中心な中で、金剛寺では甘口の高級酒を少量だけ作って、京都の朝廷や公家、織田信長、徳川家康をはじめ名だたる戦国武将にも献上していました。
その中でも豊臣秀吉は、特に天野酒を愛したそうです。
現在、天野酒ブランドの中でも「僧坊酒」と言うのが、当時のお酒づくりをそのまま継承したお酒になっています。
わが社が天野酒ブランドを発売するまでは「波之鶴」「三木正宗」というブランド名でお酒を販売していました。
昭和46年に天野山金剛寺から「天野酒」の商標使用を許され、現在では天野酒ブランドのみとなり多くの方々にも知っていただけるようになりました。
全国的に有名になった天野酒の味の特徴について教えて下さい
天野酒は、日本酒度と言う数値で言うと少し辛口に振った酒造りにもかかわらず、皆さんの味の評価は甘く感じるといわれます。
アルコール度数、酸度、アミノ酸等のバランスで甘い辛いの感じ方は変わりますので日本酒度はあくまで数値上だけの話になりますね。
私もやっぱり天野酒は、甘口と言う印象がありますね
今は辛口が主流と言うか、標準となっているので、自分では甘辛の真ん中を狙って造っているつもりでも、相対的には甘口と評価されることが多いです。
全体的に辛口指向が続くと天野酒は旨みが他社よりも多いために甘く感じるのだと思います。
国内で製造される日本酒の中で日本一甘いお酒が「天野酒僧房酒」とされています。
この「僧房酒」は、日本酒度 -(マイナス)100を目指して作るお酒です。
通常、甘口とは、±0や-1のお酒を言いますが、今年の僧房酒は-110と言う甘口の記録を更新したお酒が出来上がりました。
そう言う特徴的なお酒づくりが、色々飾られているこの表彰状の多さにも表れているのですか?
今の趣向が、辛口になってきた中で、みんながそれに慣れてくると、逆に甘みや旨みが評価されることが多くなると感じています。
天野酒伝統の甘みと旨みの特徴はこれからも引き継いでいきますしそれが他銘柄との最大の差別化になると信じています。
また、日本最高金賞である全国新酒鑑評会で通算13回、5年連続金賞受賞しており大阪府下では最多受賞蔵となっています。
これからもブレることなく天野酒らしい日本酒を皆様にご提供できればと思っておりますのでよろしくお願いします。
これからの天野酒さんの目指す方向をもう一度教えてください。
これからもブレないで、量ではなく、質を追求して行こうと思ってます
かつて最盛期は、1500石(1升瓶15万本分)作っていたのが、
今はその3分の1の500石だけです。
お酒の副産物を使った加工食品等の開発なんかにも力をいれています。
2年前から杜氏、蔵人が一新しまして若返りました。
杜氏が酒造技術のデータ管理にも着手しはじめており、生産効率の改善と品質の向上もさらに進んでいくと思います。
次は、西條さんのプライベートの趣味のところも少し教えてください。
フェイスブックでみているといろんなところに行かれていますよね?
そして、カメラも趣味ですよね?
元々、放浪癖があるんですけど、もう50代後半にもなると大好きなバイクにあと何年、元気で乗れるかな?と考えた時に、色々なバイクが欲しくなるんです。
たぶん、バイクだけで今まで12~13台くらいは乗り継いでるでしょうね。
最近は、ヨーロッパ製のバイクに魅せられています。
今は、乗ることができないものも含めて5台を所有しています。
カメラは、色々なところへ行った時に、この景色を残せないものかと思ってカメラの世界へのめり込んでいきました。
今は、サイクリングもやるし、
キャンピングカーでの旅行も楽しんでいます。
お勧めのお酒と豆菓子について
では、今日のインタビューのメインで、西條さんところの天野酒とお勧めの豆菓子のベストマッチングを探って行きたいと思います。
まずは、西條さんのイチ推しの1本を教えてください。
これが、僕のイチ推し、『天野酒 吟醸無濾過』です。
これは、やみくもに米を磨かずに、5割5分の精米具合で
大吟醸と吟醸の中間で、淡麗辛口ではなく、旨味もちゃんと残した味に仕上げているお酒です。
天野酒の王道のお酒で、実際一番の売れ筋のお酒なんです。
そして、無濾過生酒なのでここの店頭とオンラインショップでしか買えない、
一般の酒屋さんや百貨店では買えないお酒なんで、人気があるんです。
≪ここからは飲み始めました≫
どうですか? 数値だけで言うと辛口なんですけど、旨味があるでしょ?
はい、辛さは感じないけど、旨味と口の中で、芳醇さが広がっていきますね。
これは、アルコール19度なので、
めっちゃ酔いますよ。効率の良いお酒です(笑)
旨味があるので、食中酒には相性バッチリだと思います。
特に、大阪の味の甘辛い料理にはよく合うと思います。
では、このお酒と合う、おつまみとして豆菓子を西條さんに選んでもらい、食べていただきいと思います。
予め当社のHPから、前もって選んでもらっていますので、今日お持ちしたので、召し上がってみてください。
日本酒のおつまみには醤油味とか塩味なんかが、合うかな?と思いました。
では、その中で選んでいただいた雀の玉子、えびぽりっぽり、梅っぴーから召し上がってください。
天野酒にはおつまみとして雀の玉子も合いますけど、このえびぽりっぽりの方が合いますね。
海老の風味がお酒の味をより持ち上げると言うか、ケンカせずに合いますよ。
のりくるんとは合いますね、やっぱりのりと醬油は合いますよ。
黒こしょうカシューは、日本酒よりやっぱり炭酸系のビールの方が合いますかね?
では、最後この甘い豆乳きなこ大豆を一度、試してみてください。
お!甘いのに意外といけますね。甘い豆菓子はおつまみにならないと思っていました
色々召し上がって頂きましたが、西條さんの選ぶ一推し、そして、ベスト3を選んでみてください
やっぱり天野酒にイチ推しのおつまみは、これえびぽりっぽりですね
そして、次は意外と天野酒には甘い豆菓子のこれ豆乳きなこ大豆もあいますね、ちょっと路線が違う感じですがそこが良い、
そして、3番目はのりくるんとですね。天野酒の旨味とこの感じは誰もがぴったりだと思うおつまみの豆菓子です
では、西條さんのおすすめのお酒を
もう1本ご紹介ください
はい、ではこれですね、
『秋季限定 純米吟醸ひやおろし』です。
このひやおろしと前の天野酒吟醸無濾過との違いはなんですか?
これは、純米酒で、一回火入れというやつで、いわゆる生詰めと言われるお酒です。
通常お酒は、熟成前に1回火入れして、そして、瓶詰めする前にもう1回、合計2回火入れするんですが、このひやおろしは、2回目の火入れをせずに、タンクからそのまま直に瓶に詰めるので、生詰めと言われるんです。
まろやかでしょ? それも度数は17度でちょっと高めなんです。
どうですか? 丸くないですか? これが熟成酒の感じなんです。
お米の感じはこちら(ひやおろし)があるように思いますね。
口の中に入れると本当にとがった部分が無く、まるっとした感じがして
いくらでも飲める感じがしますね
そうでしょ? 旨味がこっちの方があるんです。 独特の酸味もあります
では、最後にこのひやおろしに合う、豆菓子はどれでしょうか?
ひやおろしには、この和風あーもんどが合うかもしれませんね。
天野酒蔵主、西條社長が選ぶ、日本酒に合う豆菓子は
ネコポスで届くセットができました
西條先輩、長い時間お付き合い下さり、ありがとうございました。
こんな風に取材をさせていただいたのは初めてでしたので、どのように話をお伺いすればよいのかわかりませんでした。
自分なりにレジメを用意し、先輩に質問するのですがそれはもう楽しいお話ばかりで、お酒は美味しいく頂ける、
冨士屋製菓本舗の自慢の豆菓子はある!
どんどんここには書ききれないほどいろんなお話を聞かせていただき、「日本酒」の美味しさはこんなお話を聞きながらが最高なんじゃないかと感じました。コンビニで簡単におつまみが買えますが、わざわざ取り寄せて頂いたり、買いに来ていただかないと手に入らない豆菓子はこれはまた乙な物なんではないでしょうか。
日も高いうちからお邪魔した今回の取材は、終わったときにはすっかり日も暮れ、高野街道の灯りが素敵にでした。
最後までお読みいただきありがとうございました。 冨士屋製菓本舗3代目社長 北野登己郎
追伸:これを書かせていただいてる間にまた天野酒が物凄く飲みたくなりました。